市民には馴染みの深い盛岡市の木シダレカツラは、世界に誇る珍木で、岩手県地方特有のカツラの変種だ。
早池峰山域で見つかり、岳の妙泉寺境内に移植し、大ヶ生の瀧源寺を開いた住職が、そのひこばえを瀧源寺境内に移植した。。
シダレカツラの原木は雄株で、種子が付かず、挿し木では発根しないため増殖は難しいものだった。瀧源寺の根際から出るひこばえを育て、苗木をつくり、明治のはじめ、盛岡市内に植えられた一部が「門のシダレカツラ」と「肴町のシダレカツラ」だ。 この3本が1924年に国の天然記念物に指定されている。
シダレカツラの難しい増殖を苦心の末5年間にわたって昭和10年接ぎ木の方法で成功させたのが阿部善吉さんだった。
その労を讃えて、直木賞作家森荘已池さんらが顕彰碑を大慈寺町の永泉寺の山門前に建てた。
この碑の建立が昭和37年、阿部善吉さんが亡くなったのは昭和54年というから、庭師さんの生前に建てられている。とても親しみを感じる顕彰碑だ。
(文・絵 浦川陽子)